STORY
ドパガキ診断室
真っ白な廊下に、
女の子が20名ほど並べられていた。
スーツを着た男性と、白衣を着た女性が何か話している。
女の子達はそれぞれカラフルで可愛らしい服装だ。
制服、浴衣、水着。
私服やパジャマもいる。
コスプレみたいなものだろう。
真っ白な廊下に立つには少し異様に見えた。
女の子全員に、可愛らしい首輪がついている。
統一感がある箇所と言ったら、そこだけだった。
「配信ランクを発表します」
スーツの男が言った。
「今週の1位もアイスだ、おめでとう」
アイスと呼ばれた女の子は、
ピンクと黒に大きく別れた髪色をハーフアップにして。
これまた派手なピンクと黒のボーダーの服を着ていた。
大きな猫耳のヘッドホンをつけたまま、
スーツの男を見据えていた。
「ありがとうございます……」
「他の皆も、もちろん最高だ」
男はそう言いながら、何人かの女の子の頭を撫でてまわった。
撫でられた女の子は、嬉しそうにするものもいれば、少し避けるような仕草をするものもいた。
「先生は、今日1日カウンセリングルームにいますので」
白衣の女性が一歩前に出た。
「ボタンを押してくれたらすぐ伺いますね。もちろん直接カウンセリングルームに来てもらっても大丈夫です」
女性はにこやかに言った。
「はい。今日もがんばってね。解散」
男がそう言うと、女の子達はばらばらと歩きだし、真っ白な廊下に並ぶドアに入っていった。
一人でドアに向かう子もいれば、グループで行動している女の子もいた。
アイスはひとり、部屋のドアを閉めた。
室内は真っ白な廊下とはうってかわって、ピンクのクッションに派手なゲーミングPC、可愛らしいぬいぐるみが並ぶ部屋だった。
壁に目をやると、呼び出しボタンの下には、『使用中』との文字が浮かんでいる。
早速誰かがカウンセラーの先生を呼んだんだろう。
アイスはゲーミングチェアに腰かけて、PCの電源をいれた。
好きな時に配信をしているだけで、好きなものを買えて、好きな時に好きな食べ物を配達してもらえる。
そんな環境は気に入っていた。
外に出たい時は野外配信を希望すれば、スタッフをひとりつれて外に行ける。
行きたい場所、時間なども、申請すれば自分で決めれた。
最初はもっと女の子の数がいた気がする。
今の20人くらいになってからは、あまりメンツは変わってない。
この生活に馴染めたメンバーが残った。
そういうもんだろうと思う。
電源のついたPC画面に、独特のUIの情報ページが開かれた。
最新のミーム、流行用語、話題のニュース、再生回数の上位のショート動画などが一覧になっている。
画面の端っこに、3Dの少女が現れる。
「こんにちは、今日もお会いできて嬉しいです」
その3Dの少女が話し出す。
「今日の配信に使える話題をピックアップして」
「かしこまりました」
アイスがそう言うと画面上に、たくさんのニュースが並べられる。
文字、画像、動画。
ここ数日よく見るのは、
カラフルな恐竜のアニメーションが
「助けて失神する!黙れレズビアンのおじいさん」
という文字と共に踊ってる謎のミームだった。
あとは、洪水のニュース。
世界はいつでも、何かしらの水難に苦しんでる。
一通り、情報収集できたら、今日の配信内容を決める。
決める、というか、スケジュールはある程度決めてあるけど、
本当に今日これでいいか、最終決定をする。
今日は、事故物件に起こる怪異を発見するゲームをしながら雑談だ。
この組み合わせは人気がある。
画面にそれを表示させて、ゲーミングチェアから離れる。
部屋のすみにある、全身鏡の前に座り込んだ。
メイク道具が入っている、箱をズルズルと引っ張り出す。
箱を引きずり出した、クローゼットを見上げる。
たくさん服がかけてあるのが目に入る。
猫耳付きのヘッドホンを外して、鏡に向かった。
自分の少し困ったような表情に、ため息がでた。
私はここで飼われている。
何一つ困らない、ここで。
配信にはたくさんのファンがいる。
フォロワー数、コメント、投げ銭。
配信アカウントのアイコンは私の顔だ。
なのに、この鏡にうつってる自分が何者なのか、よくわからなかった。
それでも、今日も配信をする。
ファンを楽しませて、きっと笑う場面もあるだろう。
配信が終われば達成感も得られる。
なにかを追い求めて、配信をする。
この先に、何があるかわからないまま。